Garmin GPS12 でのメモリーバックアップ電池トラブル 2001/8/5 - 2003/8/14
この項目は、あくまでも、私個人的な記録でありまして、ごく一部のGPSエキスパートにしか分からない内容です。 これを読まれましても、GarminGPSシリーズはハンディーGPSの中でその使い勝手、信頼性で抜き出た存在ですので、ご心配なく、御購入&ご使用下さい。
1.要約
私のGPS12(S/N : 36212700)がパックアップ電池の充電不足による、毎回イニシャライズ状態に陥りました。 これは、GPS本体のバックアップ電池への充電電圧が電池タイプに合っていなかったため、バックアップ電池に充電されなかったと考えられ、 VL系をML系に変更して対応し2年経過しても問題なく使用できています。
G12の基板に半田付されたML1220
ここで、VLとはコイン型バナジウムリチウム2次電池、MLとはコイン型マンガンリチウム2次電池です。これらの電池の最新情報は松下電池、三洋電池、セイコーインスツルメンツ社のHPを参照ください
2.GPS2+などでの今までのトラブル事例と対処
FGPSで話題になりましたが、GPS2+などの機種は、長時間使用せずに電源用電池を入れっぱなしにすると、内部のメモリーバックアップ用2次電池が過充電になり、
液漏れを起こし、2次電池としてのバックアップ機能を無くしてしまい、電源用電池を外すたびに、メモリーリセットしてしまう現象が報告されています。
半田錬金さんの報告によると、長時間電源用電池を入れっぱなしにすると、
バックアップ電池に使われているVL1220(コイン型バナジウムリチウム2次電池)に5V以上の充電電圧がかかる測定結果が報告されています。
この現象を回避するため、GPS使用後、長時間使用しない時は、電源用電池(単三*4本)を抜いて保管しています。
この使い方でかれこれGPS2+は6年経ちますがトラブル無く使えています。
3.GPS12でバックアップ電池電圧低下の発生
MTBなどで主に使用しているGPS12が3年を経過した頃から、バックアップ電池電圧低下による、内部時計停止などの、トラブルが出始めました。このため、長い時間、GPS12に電源電池を入れっぱなしにしたりしてごまかして使っていましたが、あまりにもバックアップ電池の容量が低下しているようなので、開封して調べてみました。
4.VL1220をつけた状態での電圧測定
さて開封しても、電池は至って健康で、塩吹きなどの外観的トラブルは認められませんでした。しかし、メイン電源を取り除いた時の電圧は1.8V程度で完全に放電状態になっていました。そこで、外部電源(DC8V)をつないで充電を開始しました。この時は基板からVL1220を外さずすべて測定を行なっています。
グラフ−1(実測) 9日間充電しても端子電圧は2.92Vまでしか回復せず、まあこんなものかと思って、使い始めました。
5.VL1220を外してのG12基板上の電圧測定
しかし、やはり電池を外して1週間置いておくと、バックアップ電池が空になってしまい、時計が狂ってしまう事から、スタートアップに時間がかかる状態。もう一度開封し、今度は基板からVL1220を外して、様子を見てみました。
基板上の充電電圧 |
Ni-MH(1.2V)*4電源 |
外部電源(8V) |
メインスイッチOFF |
2.75V |
3.08V |
メインスイッチON |
2.94V |
3.13V |
なんと、充電電圧は3V程度!VL系2次電池は充電には3.4V必要なはず。メイン電源にNi-MHを使うと、3V以下になってしまい、これではVLに電気を貯める事が出来ない!
6.VL&MLの充電電圧
左VL1220(7mAh) 右ML1220(15mAh) 端子の出方が違うので注意。
松下のカタログによると以下のような充電電圧と容量の関係になります。
グラフ−2 (Panasonic 電池総合カタログ 2000/10より)
三洋、松下のカタログを読むと通常VLでは3.4Vの充電電圧、MLでは3.1Vの充電電圧が標準になっています。つまり、このGPS12はVLがついているにもかかわらず、MLの充電電圧になっているのです。 さっそく、秋葉原の千石電商さんで、SANYOのML1220を購入。VLの代わりに半田付したのでした。容量的には、VLに合わせるとすればML621(5mAh)で十分ですが、千石電商さんで売っていた1220をそのまま使いました。
7.MLに交換後の使用状況
電池を交換して2年が経過した。この間にGPSを使った回数は約125回、毎回、帰ってくると電池を抜き保管する状況です。
使用環境
使用回数 : 約120回
使用電池 : Ni-MH (1500mAh〜2000mAh)
保管条件 : 帰宅すると、電池を抜いた状態で保管。使用頻度は週末使用して5日間電池を抜いて保管を繰り返した。
結果 : 現在(2年経過)まで、充電不足によるイニシャライズなどの問題なし。03/07/06に6月に3回ほど海水につかる状況で使用したため、内部への海水の侵入が無いかどうか、確認にするために、GPSを開封したが、海水の進入も無く、交換したML1220も概観上まったく変化は無かった。
8.GPS-12CXでの報告
このホームページをご覧になった方から、同じような問題が発生して、開封を行ないたいとのメールをいただきました。状況は似ています。やはり、G12系はちょっとバックアップ電池選択に問題があったようです。
9.リチウム2次電池のサイクル特性と充電不足の考察
さて、ここでVLでは2年しか持たなくて、MLでは持つのか?電圧の関係であるのはわかってるのですが、単純に電圧による充電不足であれば、VLを用いた場合、出荷すぐにこのような問題が発生しても不思議ではありません。2年はとりあえず持ってしまう!ここに問題があります。 これは、リチウム2次電池のサイクル特性に起因するのではないのか?と考えるようになりました。もともと、リチウム2次電池のサイクル特性はNiMHやLi-ionよりも悪く、MLでは、20%の放電深度で500サイクル、60%で100サイクル、100%で50サイクル(通常のNi-MHやLi-ionは500〜1000サイクル)と深度が深くなるとメタメタ、逆に5%では3000サイクルの特性を持っています。
グラフ−3 (サンヨーリチウム電池 2001-04 カタログより)
バックアップとして用いる場合、1〜2μアンペアの消費電流のため、通常の使用(月に1〜4回程度)では5%や10%の放電深度しか使うことしかなく、 サイクルが十分に確保されています。しかし、充電電圧が3.4V必要なVLを3V以下で用いると、その容量は小さく、2.9Vで運用した場合、 VL1220は0.1mAh(定格7mAh)程度の低容量電池として運用されてしまったと考えます(グラフ−2参照)。 この場合、5%や10%の深度で運用されるはずの電池が50%から100%で運用されるためわずか100回程度の使用でNGになってしまったと考えたわけです。
これを、本来の充電電圧が与えられ、容量を発揮できる、MLにすれば、十分なサイクル特性(3000回以上)が得られると思います。